釼持 瑠海 さん

Rumi Kenmotsu /26歳

南魚沼市塩沢出身。高校卒業後、県内のホテルへ就職。売店での接客、商品管理の経験を活かし、新潟のセレクトおみやげショップ「HenTecoRin(へんてこりん)」を立ち上げる。県内産にこだわり、地元の良いものを多くの人に知ってもらいたいと移動販売車で南魚沼市を中心に販売を行っている。

移動するセレクトおみやげショップとして南魚沼市を中心に移動販売を行い、「美味しい・かわいい」にこだわった地元産のお土産品を扱うスタイルで、新潟県の生産者と二人三脚で地元を盛り上げる釼持さんの店づくりを伺った。

地元の魅力を発信する新ジャンル

移動するセレクトおみやげショップ

「移動するセレクトおみやげショップ」という新しいジャンルで事業を展開している釼持瑠海さん。ピンク、紫、白を基調としたパステル調の車に、店主の釼持さんがセレクトした南魚沼産を始めとする新潟県内の商品が並ぶ。手作りの味噌やジャムなどの加工食品の他にも薄荷(はっか)油、山菜柄のT
シャツなど、見た目も楽しい商品が陳列され、釼持さんが作った手書きの商品のポップから店主の想いを感じる。
「自分が納得したもの、気に入ったものしか販売していません。地元の『美味しい・かわいい』商品を仕入れています。」と釼持さん。
県内の高校を卒業し、元々接客が好きということもありホテル業界へ。フロントやレストランの業務を経験した。その後、ホテル内にある売店へ配属されたことがきっかけで、販売だけでなく在庫の管理や発注、仕入れ業務を行っていく中で自分のお店を持つことを決意。2021年に「新潟のセレクトおみやげショップ「HenTecoRin(へんてこりん)」を南魚沼市でオープンした。2023年からは「受身で待つよりも、自ら移動し更に多くの方に地元の良さを伝えたい」と業態を店舗から移動販売車に変え、事業を行っている。
店名の由来は「私の生まれ育った地元の魅力をおすすめしたいという気持ちから、『H→HOME(地元) T→TOWN(街)R→RECOMMEND(おすすめ)』の頭文字を取り、名付けました。」と釼持さん。
起業した経緯を伺うと、学生時代の経験が始まりだと教えてくれた。
「中学生の時に、市の『子ども観光大使』という活動に参加していました。南魚沼の塩沢地域にある『牧之通り』に来ていた観光客の方に自分から声をかけ、観光案内をさせていただきました。活動を通して自ら考え、積極的に行動する力が身についたと思います。また、様々な交流が生まれたことで接客が好きになり、自分の育った地元を知らない人に伝える喜び、南魚沼の良さを広める楽しさを感じられたことが、現在の仕事を始めるきっかけになっていると思います。」
また、昔から県内外にある道の駅で地元のお土産を買うことが趣味だそうで、現在も気になった商品にはつい手が伸び、裏面のラベルを確認してしまうそうだ。
「たくさんの商品を深く知っていくうちに、新潟県の生産者さんのこだわりや想いを強く感じるようになりました。南魚沼をはじめ、新潟県内には買った人の思い出に残るような『想いの詰まった』商品があることを知り、観光客だけでなく地元の皆さんにもっと知ってもらいたいと思ったことも、起業のきっかけの一つとなっています。」と語ってくれた。

自分が体験したものだけを

移動販売車の中に並ぶのは主に加工食品や雑貨であるが、HenTecoRinの大きな特徴は、店主の釼持さんがほとんどの生産者に実際に会いに行っているという点だ。
現在、取扱い商品は約100種類。車内には常時30~40種類の商品が並ぶ。
「販売している商品を試すことはもちろんですが、実際に製造している生産者の方にもお会いして自分の目で確かめることも大切にしています。生産者の方には『本当に来たんだね。』と驚かれることもあります。私のような販売側が現地に来るのは珍しいそうで、喜んでくださる方が多いです。電話越しで話すのと生産者の方が生産している場所で直接お話を聞くのでは全く違いますね。お客様が足を運べない分、自分が体験してくることが大切だと思っていますし、実体験があることでお客様への商品の伝え方が変わってくると思っています。」と釼持さんは語る。
また「商品を選ぶ基準は新潟県産の原材料を使用しているものや、新潟県内で製造されたお土産で実際に私が試して中身も見た目も気に入ったものしか置いていません。作り手のこだわりがあり想いが強い商品で、添加物や農薬をなるべく使っていない身体にいいものを仕入れることを意識しています。」
商品の開拓はホテル時代の繋がりや既に取引のある生産者の方から縁をいただくこともあるという。事業を始めて2年足らずで南魚沼を始め県内の生産者と強い繋がりを持つ釼持さん。気になった生産者を見つければ自ら連絡し、現地に会いに行くというスタイルで作り手との関係を深めているそうだ。
接客時には商品について一つ一つのストーリーを丁寧に説明し、商品の特徴だけでなくどんな生産者の方が、どんな想いで作っているかを教えてくれる。買い手側はまるで自分も生産者に会えたかのような体験ができる。そして、ついつい自分も誰かに伝えたくなってしまうのだ。
釼持さんが実際に体験し、目にしたことを言葉にして商品の魅力を伝える。買い手の満足度が高くなるのは必然だろう。
「お客様から『ここで買った商品をプレゼントしたら喜んでもらえた。』という言葉をいただいたり、生産者の方から『あなたにうちの商品を売ってもらえてよかった。』と言っていただけたりすると本当に嬉しいですね。まだまだ地元の人も知らない素晴らしいものがたくさんあるので、もっと多くの方に知ってもらいたいと思っています。」と決意を語る。

生産者と二人三脚

釼持さんは「美味しいのはもちろん、見た目も『かわいい』と思える商品を置いています。」と教えてくれた。
生産者にパッケージの提案などをすることもあるといい、地元のお米農家にお願いし新しいラベルを制作してもらったり、取り扱っているTシャツの色を別注するなど、生産者と一緒に商品を「深化」させている。
釼持さんが作り手との関係を築いているからこそ実現できることであり、「商品の魅力をもっと多くの人に伝えたい。」という彼女の熱意が周囲を巻き込む力となっている。
また、多くの生産者が課題とするのは、いい商品をつくっても知ってもらう機会がないという点だ。南魚沼市内産品のブランド化促進を目指し、各地域の生産物、商品、技術を国内外へ発信しヒット商品に育てるプロジェクト、「にっぽんの宝物プロジェクト」に市内の企業が積極的に参加している。既にいくつかの地元の商品がグランプリを獲得し、南魚沼市ブランド化に向けて着実に歩みを進めている。更なるブランド化促進を加速させるためには、釼持さんのような生産者と売り手との二人三脚が地域ブランド誕生のヒントになるのではないだろうか。

HenTecoRin

南魚沼を始めとする新潟の「美味しい・かわいい」を集めた、移動するセレクトおみやげショップ。ピンクと白のパステルカラーの車が目印。販売場所やイベント参加情報はインスタグラムにて随時更新中。

迷ったら楽しいと思える選択を

最後に釼持さんに事業を行う上での心構えを聞いた。
「『迷ったら楽しい方』を選ぶようにしています。業態を変える際も、お客様を受け身で待つよりは自ら移動する方が楽しいはず!と思い決断しました。つい利益を優先しがちですが、自分が楽しいと思った選択を信じて行動するように心がけています。また、出会いや繋がり、縁も大切にしています。商品の仕入れ先や、困った時に力になってくれる人や団体など、事業を始めてから想像していたよりもたくさんの縁が周りと繋げてくださっています。」
プライベートでは個人事業を行っている仲間と地元の飲食店で意見交換をしたり、友人と川でバーベキューをして気分転換をしたりと、南魚沼での交流を楽しんでいるそう。
「ここ数年で事業を始める同世代が確実に増えています。様々な分野で活躍する方々と地元を盛り上げていければと思っています。」と釼持さんは語る。
南魚沼市では、事業創発拠点「MUSUBI-BA」で創業支援セミナーなど、定期的に事業展開に興味がある人向けのイベントも行っている。釼持さん自身も積極的に参加されているということで、南魚沼『起業女子交流会』の仲間とはイベントを企画し、繋がりの輪を広げているそうだ。
彼女を始めとする熱い想いを持った起業者同士の繋がりが、益々南魚沼を盛り上げてくれることだろう。

LAME O

関東から移住したスノーボードが趣味の店主が営むバー。お酒の種類が豊富で生地から作るピザやハンバーガーなどもおすすめ。1人飲みも大歓迎。創業18年の観光客だけでなく地元からも愛されるお店。

●〒949-6680 南魚沼市六日町124
●TEL.025-772-7587
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心も身体も喜ぶスープランチ

「温かいスープのお店が南魚沼市にできてとても嬉しいです。美味しいのはもちろんですが、具もたくさん入って食べ応えもあり、身体も温まって良いことづくめのランチですね。」今日は豆腐の鶏団子入りミネストローネと南魚沼産コシヒカリのご飯のセット。サイドメニューには卵焼き。ドリンクは十日町松之山産の神目帚(かみめぼうき)茶VANAを注文。

sachimoyou produced by なにわ茶屋

「一食完結おかずスープ」をコンセプトに、板前歴23年のご主人と唎酒師やシードルアンバサダーの資格を持つ奥様が始めた、素材本来のおいしさと心も身体も喜ぶ旬の食材をふんだんに使った2022年オープンのスープ屋さん。

●〒949-6680南魚沼市六日町92-6 なにわ茶屋内
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