小杉 永愛 さん
Toai Kosugi / 28歳
(株)CIVIC PRIDE
マーケティングコンサルタント
南魚沼市出身。市内高校卒業後、関西の大学に進学。首都圏や新潟市での生活を経て南魚沼にUターン。南魚沼でテレワークを実践している。
新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークという働き方が注目を集めた。南魚沼出身の小杉永愛さんは首都圏や新潟市での生活を経て南魚沼にUターンし、テレワークという働き方を実践している。今回は南魚沼でテレワークをする魅力、その可能性を伺った。
新しい働き方で見える南魚沼の魅力
テレワークの普及により南魚沼へのUターンを決意
小杉さんが南魚沼にUターンしたのは令和2年。高校卒業以来約10年ぶりの南魚沼暮らしだ。地元の高校卒業後、関西の大学に進学。大学時代にはフロリダ大学への交換留学も経験した。大学卒業後は都内で観光業界に就職し、ツアーの企画や添乗員業務を数多く担当。平成30年には地元である南魚沼の観光をさらに活性化させたいという思いから、インターネット関連サービスを中心に展開する大手企業に転職。新潟支社にて新潟県、群馬県エリアのコンサルタント営業に従事した。
勤務地は新潟市であり、そこで1人暮らしをしていたが、新型コロナウイルスの影響を受け、会社がテレワークを本格的に導入した。このことが南魚沼へのUターンのきっかけとなった。 「コロナ禍によりテレワークが始まった直後は新潟市の自宅で仕事をしていました。しかし、会社に行くのが月に数回であれば新潟市で生活し続ける必要はない。地元の南魚沼でも十分仕事ができると思い、Uターンを決意しました。」と小杉さん。
現在は退社し、これまでの経験を活かすとともに更なるスキルアップのため、山梨県に本社を置く(株)CIVIC PRIDEに転職。マーケティングコンサルタントとして人材スカウト事業、入社後活躍支援事業、ホテル・観光マーケティング事業に従事している。
働く環境を変えることで新しい発想が生まれる
(株)CIVIC PRIDEの本社は山梨県だが、月に1回の本社でのミーティング以外、全社員がテレワークで勤務している。社員は新潟、東京、群馬、山梨などそれぞれが好きな場所で仕事をしているという。前職の時からコロナ禍の影響もあり、テレワークは経験済みだったため、不安はなく、むしろテレワークという働き方が好きだという小杉さん。
「自分の好きな場所、ライフスタイルに合わせて働けるということがテレワークの良いところです。天気の良い日は自宅の庭先で仕事をしたり、市内にはコワーキングスペースもあるので、そこを利用したり、気分転換をしながら仕事をしています。旅行、宿泊といった観光に関するマーケティングが業務のため、ワーケーション(「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語。観光地、リゾート地でテレワークを活用し、働きながら休暇を取る過ごし方。)という働き方も試しています。企画やマーケティングには柔軟な発想やアイディアが重要なので、決まった時間、決まった場所で仕事をするよりも、働く環境を変えて気分転換することで新しい発想やアイディアが生まれると思っています。」と嬉しそうに語る。
小杉さんが語るようにコロナ禍といわれるようになってから、ワーケーションやコワーキングスペースといったワードをよく耳にするようになった。南魚沼でもトライアル事業として民宿を利用したワーケーションの推進を行っている。
また全国的に需要が増えているコワーキングスペースも市内にオープンした。その中の一つが六日町地区にあるOFFICE 9btである。
落ち着いた空間に仕事の疲れを癒す植物を配置しており、椅子、ソファー、テーブルの全てが洗練されたコワーキングスペースを兼ねるレンタルオフィスだ。このコワーキングスペースを週に1~2回程度、打ち合わせや特に仕事に集中したい時などに利用するという小杉さん。
コロナ禍によって生まれた新しい働き方が増えてきていると同時に、南魚沼にもその環境が整いつつある。
南魚沼でのテレワークの魅力
テレワークが浸透し、会社に行かない働き方をすることにより、職場での人間関係が希薄になるということが心配されるが実際どうなのだろうか。
小杉さんの場合、今の会社に就職した時点でテレワークでの勤務だったため、社員同士の人間関係に変化はなかったという。業務連絡はチャットで行い、会議などもオンラインを利用して行う。業務を行う上では不便はない。だからこそ、月に1回の山梨県でのミーティングを大切にしている。
「オフィスで仕事をしていた時のように毎日顔を合わせることが出来ないので、実際に会う機会を大切にしています。やはり実際に合ってコミュニケーションをとることはすごく大切ですし、なくてはならないものだと思っています。」と語る。
OFFICE 9bt オフィス ナインビーティー
久保田不動産ビル(株)が運営するレンタルオフィス&コワーキングスペース。細部までこだわり、利用者にとって居心地の良い空間になっている。
●949-6680新潟県南魚沼市六日町479 久保田ビル1F
●TEL/025-772-2116
●HP/https://Kubota-real.com/
テレワークならどこにいてもやりたい仕事にチャレンジできる
職場での人間関係は少なくなったようだが、身近な人達との交流は深まっているようだ。
「南魚沼には家族も友達も尊敬できる人もたくさんいる。そんな人達の近くでやりたい仕事ができるのは幸せなことです。」という小杉さん。プライベートでは仲の良い友人と南魚沼ならではの自然や温泉を楽しんでいる。
「プライベートは外で過ごすことが多いです。夏は気軽に河原でバーベキューができるし、温泉にもよくいきます。南魚沼には泉質も雰囲気も様々で魅力的な温泉がたくさんあり、仕事終わりや友達と遊ぶときによく利用しています。特におすすめなのが、五十沢温泉ゆもとかんです。泉質が素晴らしく、肌も身体も元気になります。岩風呂も最高で晴れた日に山々を見ながらゆっくりと温泉につかると癒されます。フロントの小澤陽香さんとも交流があり、どうしたらより南魚沼の魅力が伝わるかなど話し合い、楽しい時間を過ごしています。」と語る。
また、南魚沼の冬といえばウィンタースポーツが盛んだ。南魚沼のスキー場は町場からの距離が近いということが特徴だ。車で20分程度走ればどこかのスキー場に行ける。小杉さんも午前に軽く滑ってから午後仕事をするということを実践している。このような生活ができるのも南魚沼ならではである。
成人式などのイベントで南魚沼市出身の若者に「将来的にUターンしたいか?」と質問すると「つきたい職業がないからUターンしたくない」、「首都圏と比べて賃金が少ないから給料が多い都会で働きたい」といった回答をよくみる。確かに首都圏と比べると収入、所得は低く、就職先の選択肢が限られるのも事実だ。
小杉さんも以前は同様の意見を持っていた。「生まれ育った南魚沼に恩返しをしたいという気持ちをずっと持っていましたし、家族や友達の近くで暮らしたい、南魚沼の自然豊かな環境で働きたいという思いがあったので、経験を積んだらいずれは南魚沼に戻ろうと思っていました。しかし、私が積んできた経験を活かすことが出来る会社があるのかということと、収入面が心配でした。」と語る。だが、現在はその考えが変わったようだ。
「コロナ禍により、テレワークが浸透し、導入している会社はたくさんあるので、今後この働き方はスタンダードなものになると思っています。以前は、南魚沼にいながら首都圏の会社に所属するということは難しいものでしたが、今は大好きな南魚沼で自分のやりたい仕事ができます。自分のやりたい仕事が南魚沼にないからといって南魚沼で生活することをあきらめなくてもいいんです。そして首都圏よりも生活コストが掛からない環境で首都圏で働く人と同等の収入を得ることができる時代です。
また、南魚沼にUターンして思ったことの一つに南魚沼にも魅力的な企業がたくさんあるということです。テレワーカーとして南魚沼で働く人が南魚沼の企業と首都圏の企業の懸け橋となり、地元の企業とテレワーカーが協力して南魚沼を盛り上げていければ最高だと思います。」と語る。
この話を聞き、今後、テレワーカーが南魚沼をあらゆる面で活性化させる起爆剤になるのではと感じた。
南魚沼を多くの人に知ってもらいたい
「経験を積み、自分自身の企画力、マーケティングスキルを高めていきたいです。そして南魚沼の魅力を1人でも多くの人に知ってもらい、観光で訪れたい人、仕事をしたい人をどんどん増やしていきたいです。そうやって大好きな南魚沼に少しずつ恩返しをしていきたいと思っています。」と小杉さんは今後の目標を語る。
五十沢温泉 ゆもとかん
南魚沼市五十沢地域にある宿泊施設。温泉は、天然源泉かけ流しとなっており、岩風呂はその景観と開放感から多くの観光客に人気。
●〒949-6775新潟県南魚沼市宮17-4
●TEL/025-774-2876
●HP/https://www.ikazawaonsen.com/