西村 由貴子 さん

Yukiko Nishimura / 36歳

SQREEM Japan合同会社

京都市出身。大学卒業後、首都圏で製薬会社等に勤務。令和3年に南魚沼市に移住し、現在はリモートワークを実践している。

コロナ禍の影響を受け、勤務先がリモートワークを導入したことがきっかけとなり、令和3年7月に南魚沼に移住した西村由貴子さん。リモートで仕事をしつつ趣味であるスノーボードを楽しんでいる。今回は西村さんに雪国南魚沼ならではの「ここにしかない暮らし方」を伺った。

コロナ禍がもたらした新しい働き方

クオリティ・オブ・ライフを求めて

コロナ禍の影響により、リモートワークの導入が社会的に進み、働く場所を問わない働き方が広がっている。住環境や暮らし方、ライフスタイルを優先した生活を求める働く世代が増え、首都圏の喧騒を離れた地方での暮らしにも関心が高まっている。
国としても令和3年に都市部への過度な人口集中解消や地域活性化の観点から、関係機関が連携し、テレワークの普及と促進に努めている。
仕事をしながら趣味も充実させることができたら、人生がより色鮮やかなものになるということなのだろう。働き方改革の中では、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質を向上し人生の充実を図るもの)を求める生き方への関心も高まっており、こうした中で地方での生活とクオリティ・オブ・ライフを求めた移住者は南魚沼にも多くいる。
西村由貴子さんは令和3年に生活の拠点を南魚沼に移した。しかし、転職はせずに移住前と同様、首都圏にある会社に在籍し、現在はリモートワークを実践している。趣味であるスノーボードを思いっきり楽しめる環境が南魚沼にあったことが移住の一番のきっかけだったと語る西村さん。西村さんにとって南魚沼での生活はここでしかできない暮らしとなっているようだ。

自分の情熱をビジネスへ

大学卒業後には「人の役に立つ何かをしたい」という思いから医薬品業界に就職。その際に、日本の経営形態が世界でどこまで通用するのか疑問に感じ、自身のスキルアップのためにMBA(経営修士)を取得することにした。オンラインで履修が可能という利点から、Bond-BBT Global Leadership MBA(日本と世界の他の国々との交流を専門とする経営学修士が取得できるプログラム)に入学しMBAを修了。
現在はSQREEM Japan合同会社でプロジェクトマネジメントディレクター兼ブランドマネージャーとして、戦略立案、コミュニケーションにおけるクライアントの課題解決などを行っている。「世の中にイノベーションを起こすような面白いことができると感じ、今の会社に勤めています。クライアントに満足いただけたときにやりがいを感じますね。」と西村さんは語る。

どうしてもスノーボードができるところで

コロナ禍を機に会社がリモートワークを導入した。本社は神奈川県にあり、現在、社員は全員リモートワークをしている。打合せなどで東京へ出張することもあるが、ほとんどの仕事をリモートでこなすことができる。
京都市出身の西村さんは大学を卒業し、初めて首都圏に住んだ時、都会の人混みや密集した住宅の感じが自分には合わないと感じたという。仕事の関係で一度東京を離れたが、再度東京に戻ってきたときも同じように感じた。 コロナ禍を機にリモートワークが広く導入され、仕事をする環境を選ぶことができるようになったとき、移住を考えるきっかけとなったのはそんな都会での生活に対する違和感だった。ではなぜ西村さんは移住先に南魚沼を選んだのだろうか。
西村さんが初めて南魚沼市に訪れたのは令和2年の冬。「どうしてもスノーボードができる所でリモートワークをしたいと思って、スキー場があることが前提で移住先を探し始めました。南魚沼に決めたのは、スキー場がたくさんあってどのスキー場も20~30分程で行けること、仕事で東京に行くのもそれほど遠くないという利点があったからです。あとスノーボードを通じて南魚沼で知り合った方々と仲良くなり、南魚沼に移住することを勧められたのも大きなきっかけでした。」
やろうと思ったら行動に移す。翌年の令和3年7月には南魚沼市へ移住した。冬期間は毎朝スキー場でスノーボードを楽しみ、午後から自宅や六日町駅前のアトモスカフェ、ケロハウスなどのカフェで仕事をする生活だ。
「リモートワークだと自分の裁量で時間や仕事量をコントロールできるので私には向いています。オフィスワークよりも今のスタイルのほうが、私には合っていますね。」と西村さん。
「お昼には切り上げて午後から仕事をするには、あと何本滑れるか、時間を考えながら滑っています。ついつい楽しみすぎて片付けの時間が取れなくなってしまい、結局バタバタと仕事に向かうこともありますが、仕事に支障が出ないように楽しんでいます。」
市内には八海山スキー場をはじめ10か所のスキー場があり、六日町駅を基点として20~30分程度で行ける。ファミリー層からエキスパートまで楽しめるスキー場があるほか、石打丸山スキー場には、世界最大級のハーフパイプ「ガンホー・モンスターパイプ」(高さ6.7m・幅22m・長さ170m)が設置されている。その日の気分で多種多彩なスキー場が楽しめるというのも、南魚沼ならではの魅力だろう。
その中でも、西村さんは八海山スキー場と舞子スノーリゾートによく足を運ぶという。「毎朝登る八海山スキー場のロープウェーからの景色が最高です。」と嬉しそうに教えてくれた。
「スノーボードのシーズンが終わると、グリーンシーズンは登山に行きます。今年は八海山と越後駒ヶ岳を登頂するのが目標です。登頂できた達成感が好きで、もっとチャレンジしたくなりますね。」

舞子スノーリゾート

冬はスキー・スノーボード、夏はオートキャンプ・BBQ・ディスクゴルフ・グラウンドゴルフなどのアクティビティを楽しむことができる。

●〒949-6423 新潟県南魚沼市舞子2056-108
●TEL/025-783-4100
●HP/https://www.maiko-resort.com/

南魚沼に住むということ

首都圏から地方への移住で気になるのが利便性の問題だ。「六日町駅周辺に住んでいれば、普段の買い物は徒歩圏内ですし、自転車で行ける範囲内にスーパーや飲食店もあるので、不便さは感じたことはありません。南魚沼でどうしても手に入らないものはネットショッピングを利用すればすぐに手に入りますし、買い物には全く困っていないですね。」と西村さん。
南魚沼での買い物はほとんど徒歩で行くという西村さんにとって買い物のための散歩も楽しみの一つだ。外に出れば新鮮な空気があり、静かで穏やかな時間が流れている南魚沼ならではのリフレッシュ方法だろう。地方暮らしでは、車を所持することや運転免許の取得が必須というイメージを持つ人もいると思うが、必ずしも持たなくても居住場所を選べば生活ができることを、西村さんは教えてくれた。
課題となるのは、仕事がしやすい環境整備が首都圏ほど進んでいないということだ。西村さんも移住に際しては、家で仕事ができる環境をしっかりと整えるべきと感じたようだ。
南魚沼においてもこの課題に着目し、「LIFE in (vol.14)」で紹介したレンタルオフィスOFFICE 9btのようなワーキングスペースが続々とオープンしている。
令和4年4月1日には、六日町駅内に「南魚沼市事業創発拠点」がオープンし、コワーキングスペース、イベントスペースとして市内外の人が利用できるようになった。自然が感じられる木組みの内装で、開放的な雰囲気で仕事をすることができる。社会的な需要に応えるべく、南魚沼でも少しずつリモートワーカーを受け入れる環境が整いつつある。

ケロハウス

落ち着ける場所、クセになる場所をコンセプトに営業しているカフェ。コーヒーの他、手作りのシフォンケーキが人気。

●〒949-6680 新潟県南魚沼市六日町91-6 2F
●TEL/025-772-7472
●営業時間/11:00~18:00
●定休日/土・日曜日
●HP/https://www.instagram.com/kerohouseker/

今後の夢や展望

最後に今後の目標を伺った。「1つは自分で事業を起こすことです。具体的な内容はこれからですが、5年以内には実現したいと考えています。2つ目は、私と同じように趣味と仕事を両立し、南魚沼で楽しく生活する人を増やすことです。自分がこういう生活をしていると、周りの人から『すごいね』とか『そんなのできるんだ』といわれることも多いですが、やってみたら意外と誰でもできるんじゃないかなと思います。このライフスタイルを実践してみたいという気持ちがある人にはチャレンジしてもらい、新しい生活スタイルとして広めていきたいですね。」と西村さんは語る。
スノーボードにも仕事にも情熱を注ぎ、毎日を楽しむ西村さんの姿は、恐らく誰から見ても羨むほどキラキラしたものに映るだろう。
コロナ禍をきっかけに普及したリモートワークという働き方が、自分の人生を見直す一助になっているのかもしれない。西村さんは、「せっかくリモートワークをするのなら」と趣味を思いっきり楽しめる環境を選択し、南魚沼で『自分の好き』を求めた生活を送っている。
大切なのは「やってみたい」という気持ち。南魚沼市では雪国ならではのウィンタースポーツのほか、キャンプやスケートボードを楽しめる施設も充実していて、趣味を楽しむ要素はいくらでも揃っている。
自分の人生を彩るために、西村さんのようにまずは「やってみる」ということが大切なのではないだろうか。

大好きなカレーを求めて

「カレーが好きで、メニューにあると目にとまりますね。ここのカレーはトマトとひよこ豆の形が残っていて歯ごたえもよく、健康的な感じがするのでお気に入りです。ちょうど良い辛さで食べ応えもあり、雑穀米を使用しているので女性には嬉しいですね。」 アトモスカフェはリモートワークのためによく利用するという。この日は南魚沼で知り合った移住の先輩と情報交換をしながら、大好きなカレーを食べて仕事に向け気分を上げていた。

アトモスカフェ

カレー、オムライス等のカフェメニューから、雑穀米のとろろご飯といった体に優しいランチまで取り揃える六日町駅前のお洒落なカフェ。

●〒949-6680 新潟県南魚沼市六日町124-2 青木ビル2F
●TEL/025-770-0709
●営業時間/11:00~19:00
●定休日/火曜日